小さなボディーに秘めたる「雷(いかずち)」パワー!!
突然ですが、"良い燃焼の3要素"という言葉を聞いたことがありますか?整備士の方やエンジンに興味のある方はきっと一度は聞いたことが有ると思います。エンジンが正常に動く為に必要な3つの条件のことですね。
1.良い点火(火花)
2.良い燃料(混合気)
3.良い圧縮(圧縮比)
のことです。
これらの内どれか1つでも欠けると、エンジンは正常に動くことができません。
今回は、3要素のうち"良い点火"に関する部品「スパークプラグ」について紹介したいと思います。
さて、車両のスタートボタンを押してスターターが回った直後、エンジンのシリンダー(燃焼室)内では何が起こっているのでしょうか。一連の流れを簡単に説明してみましょう。
スターターによってエンジンが強制的に回転させられ、ピストンが下降した時シリンダー内に空気を吸い込みます。それとタイミングを合わせてインジェクターは燃焼室内(実際はもうちょっとエアクリーナーに近いところ)に燃料を噴射します。そうすると、空気と燃料が混ざり合って混合気となり、シリンダー内に入っていきます。更にエンジンが回転しピストンが上昇すると、吸い込まれた混合気は燃焼室内に押し込まれ圧縮されます。それとタイミングを合わせてプラグが火花を散らすと、混合気に引火して爆発が起こり、エンジンがドドンと動き出すわけです。その後、燃焼ガスを排気して一連のエンジンのサイクルが終了します。
エンジンは、これをずーっと繰り返しています。
プラグの火花から燃焼が始まるということを考えれば、「スパークプラグ」がとても重要な部品ということが分かると思います。
さて、この火花ですが、プラグ先端部での放電現象によって発生します。小さな雷のようなもので、瞬間的に数万ボルトもの電圧が掛かっています。放電の状態はプラグ先端の素材、形状、ギャップ(隙間)等によって変わります。プラグをよく見ると、素材や、先端形状に違いがあるのが分かると思います。またプラグの劣化状態によっても大きく左右され、先端が摩耗してくると火花の飛びが悪くなり、混合気の燃焼に影響します。混合気の燃焼状態が悪くなると、パワーの低下、燃費の悪化、更にはエンジン寿命へも悪影響を与えるおそれがあります。そのような時には、プラグを交換するのもよいでしょう。
プラグはシリンダーヘッドというところについていますが、燃焼室内に先端部が出ている為、高温の燃焼ガスの影響を直接受けています。この熱もプラグの性能に大きく影響します。プラグには「熱価」というものが有り、プラグが発散する熱の度合いを表しています。発散度合いの大きさにより、高熱価(冷え型)、低熱価(焼け型)という呼び方をします。また、プラグには、使用上、温度範囲(中心電極が約500~950℃)の制約があり、その中で性能を発揮するようになっています。ですから、エンジンの特性やチューニング状態、使用条件等によって最適なプラグを選択する必要が有ります。
一概にどのプラグが一番良いと言うのは難しいのです。
気になられる方は、一度点検をしてみてプラグの焼け具合などを確認してみるのがよいかもしれません。
ここで、注意していただきたいのがプラグの脱着についてです。先ほど述べた通りプラグはシリンダーヘッドに直接取り付けてあります。古い車両の場合プラグが固着していることが有り、無理に外そうとするとプラグの碍子部(白い陶器の部分)を損傷したり、シリンダーヘッドのネジ部を損傷することになりかねません。取り外した穴から、異物がエンジン内に落ち込んでしまうこともあります。また、取付時も無理にねじ込むと、ネジ部を損傷することが有ります。プラグの破損はプラグを交換すれば済みますが、万が一シリンダーヘッドを損傷するとシリンダーヘッドの交換が必要ですのでご注意を!不安な方はスタッフにお任せ下さい。
それと、もう一つ。ハーレーでは、混合気の燃焼状態を監視するシステムが備わっており、プラグもその一部になっていますので、プラグ交換する場合は必ず純正のプラグをご使用ください!
プラグは小さな部品で、それ自体はどうという事が無いように見えますが、こだわりだすととても奥が深いのです・・・。
※プラグ交換時は、プラグケーブルも合わせてご検討いただくと、より一層効果的です。
エンジンの眠りを覚ます力!!でも、結構弱りやすいんです
サービスに掛かってくる電話で結構多いものにこんなものが有ります。
「ツーリングに出かけようと思ってエンジンを掛けたら、カタカタ音がするだけでエンジンが掛からないんだけど・・・。」
通常であれば、スタートスイッチを押したらエンジンがドドンと掛かるはずですよね。(たまにON/OFFスイッチがOFFになっているだけだったということも有りますが・・・。)
こういった場合、バッテリーが弱っていることがほとんどです。
いわゆる"バッテリー上がり"というやつです。
冬場など、ほとんど乗らずに放置してあった場合などには、バッテリーが上がってしまうことがよくあります。たとえ新車のバッテリーでも新品に交換したばかりでも、数ヶ月ほど放っておいたらバッテリーは弱ってしまいます。これは、車両は動いていなくてもメーターの時計機能などでわずかながら電気を消費するからです。また、セキュリティーが掛かっていた場合などは更に消費量が多くなります。それに、バッテリー自体もわずかではありますが自然放電をしています。
そんなわけで、久しぶりにエンジンを掛けようとした場合など、バッテリー上がりに遭遇してしまうわけです。
そうならない為に、こまめに乗っているんだけどという話を聞きますが、こまめに乗ればよいかというと、そうでもありません。
バッテリーはエンジンが掛かっているときに充電されますが、使用量から余った分が充電に回っています。走行時間が短ければ充電量は少なくなります。使用量としては、特にエンジン始動時に多くの電気を消費します(右のグラフ参照)。また、バイクはヘッドライトが常時点灯ですし、最近の車両は電子制御システムですから多くの電気を消費します。オーディオや無線など電子機器を使用していれば更に使用量は増えます。ちょこちょこ乗ってエンジン始動回数が多いと、使用量の方が充電量を上回ってしまい十分な充電が出来ないのです。
走って充電する場合は、長距離走ってください。そうすれば充電量は当然増えるのです。(何キロくらい走ればよいかというのは走行状況にもよるので一概には言えません。)
電気装置をOFFにしてアイドリングで充電するという方がいるかもしれませんが、これは絶対にやめて下さい。ハーレーは空冷エンジンが主流です。走っていなければ空気が流れてきません。アイドリングで放置すれば確実にオーバーヒートしてしまいます。最悪の場合、エンジンが焼きついてしまいますのでアイドリング充電はNGです。
さて、不運にもバッテリー上がりに遭遇してしまった場合にどうするか。
少しスターターモーターが回って始動しそうという時は、連続して掛けず間隔をあけて試してみて下さい。始動時に下がった電圧が一時的に回復して、運が良ければエンジンが掛かるかもしれません。ただ、スターターモーターを傷めやすいので、数回やってだめな時は残念ながらあきらめて下さい。
カタカタ音がするだけというような場合は、正常な車などから電気をもらう方法があります。いわゆる"ジャンピングスタート"というやつです。でも、これには正常な車とケーブルが必要ですし、ケーブル接続順序など注意点もあり、間違えるとスパークすることもありますので、お勧めしません。
また、最近の車両は電子制御システムなので、押しがけは出来ませんので念のため。
エンジン始動できないときは、ロードサービスやお店に電話して下さい。
バッテリーが上がってしまったら、バッテリーの充電か交換が必要です。交換するかどうかは、使用状況にもよりますので、スタッフにご相談下さい。
バッテリーは結構高価ですから、バッテリー上がりは何とか避けたいものです。その為には普段から長距離を乗ってあげて下さいね。
とは言っても、寒い時期に乗るのはちょっと・・・という方は、日頃からバッテリーの充電をしておいてくださいね。
そこで必要なのがバッテリーチャージャーです。つないでおくだけでバッテリーを最適な状態に充電してくれます。専用ケーブルを車両に取り付けておけば、いちいちシートを取り外したり、カバーを外したり・・・、といった面倒なことがありません。
バッテリーチャージャーにはいくつか種類が有りますので、詳しくはスタッフにお尋ねください。
ツーリングシーズンになって、せっかく楽しみにしていたのにエンジンが掛からないなんて悲しすぎますよね。
転ばぬ先の杖、バッテリーチャージャーをぜひご準備ください。
止まらなかったら一大事!!「止まる」ための最重要部品
ブレーキの話に入る前に、ブレーキが作動して車両が停止するまでの流れを確認してみましょう。
フロントブレーキの場合、
ブレーキレバーを握る
↓
マスターシリンダー(レバー取付部分)内部のピストンが押される
↓
油圧がかかる
↓
キャリパー(ディスクを挟んでいる部分)内部のピストンが押される
↓
ブレーキパッドがブレーキディスクに押し付けられる
↓
この抵抗により車輪の回転力が下がる
↓
減速、停止
となります。
リアブレーキの場合、レバーがペダルになるだけでまったく同じ流れです。このすべての流れがきちんと作動しなければ能力は発揮されません。
点検時には、まず直接ブレーキディスクの回転を止めるキャリパー廻りを点検します。
キャリパーの内側をのぞくと汚れが付着していますね。この汚れは、パッドとディスクの削りカスがグリスと混ざり合ったものです。定期的に清掃しないとピストンの作動不良やブレーキ鳴きの原因にもなります。
きれいに清掃して必要な部分は再度グリスアップ。この時、ピストンがスムーズに作動するかもチェックします。外したパッドやパッドピン、ブレーキディスクもチェックします。
清掃はもちろん、残量や摩耗の状況はどうか、変な減り方をしていないか、ピンにがたつきはないか、などなど。
もしパッドが写真のようになっていたら、限界を超えています。新品と比較するとその差は歴然ですね。すぐに交換が必要です。
ところで、キャリパーやパッド、ディスクも重要ですが、見落としがちなのがブレーキフルードです。
ブレーキは先程確認したとおり、回転するディスクにパッドを押し付けて回転を止めようとする訳ですから、大変熱を持ちます。その部品に触れるブレーキフルードは、熱に強くなくてはなりません。また、極寒の冬に凍ってしまっては使い物になりません。ブレーキフルードは、熱さや寒さに強いつまり沸騰しにくく凍結しにくい液体が使われています。
現在ハーレーで使用されているブレーキフルードは吸湿性があるタイプなので、時間の経過とともに水分を含み劣化します。
水分を含むと、どんどん熱さ寒さに弱くなります。
最悪の場合、ブレーキの持つ熱でフルードが沸騰してフルードの中に気泡ができ、ブレーキがまったく効かない状態(ベーパーロック現象って聞いたことがありますよね)になってしまいます。
また、水分を含むことにより錆が発生しやすくなり、それが更にトラブルの原因になります。
ここで、専用ブレーキフルードテスターで新品のフルードをテストしてみました。これは、フルードに含まれる水分量を測定しフルードの良否を判定するものです。
さて、ライトが光っているところにご注目。
<1%
OK
というゾーンのランプが点灯しています。
これは「水分が1%以下だからOKだよ」のサインです。これが年月とともに劣化が進むと、2%,3%・・・となってくるわけです。3%を超えると交換のレベルということですね。どれくらい経つと3%を超えるかはわかりませんが、ブレーキフル―ドの劣化は日々進んでいるのです。走行距離の多い少ないに関係なく進行しています。走ってないから大丈夫というわけではないんです。
車検の際には必ず交換しておいて良い物だと思いますよ。ブレーキが効かなくて事故になったり、ブレーキラインが錆だらけになってしまってからでは大変ですからね。
まずはハイテクテスターで診断してみましょう。
それと、ハーレーの場合、年式によって使用しているブレーキフルードのタイプが異なるので注意が必要です。万が一混合すると、分離や錆の発生、シールの劣化などシステム全体に影響を及ぼします。
また、塗装面に付着すると塗装面を浸食します。リザーブタンク(フルードが入っている部分)のキャップは開けないようにしましょう。
ブレーキフルードの交換はスタッフにお任せください!!
地面との唯一の接点、命を乗せている重要な部品
『このタイヤ、まだ溝があるから大丈夫だよ。』
よく聞くこの一言。
でも、本当にそうなのでしょうか!? レース用のタイヤを思い出してください。グリップ力を最大限に発揮したい場合、タイヤに溝なんて無いほうがいいんです。
ではなぜ、通常のタイヤには溝があるのか・・・。
それは、雨の中を走ることもあるからです。溝がないタイヤでウェットな路面を走ると、路面とタイヤの間に水の逃げ場がない為、タイヤは水に邪魔され路面をキャッチできなくなるのです。通常のタイヤは雨の日と晴れの日でバランス良く性能を発揮できるようになっている訳です。その点で、タイヤの溝の残量はとても大事な要素です。
しかし、それが全てという訳でもありません。輪ゴムをずっと日向に放置しているとボロボロになるように、タイヤも日々劣化していきます。最初は弾力があったのに、だんだんプラスチックのように堅くなります。堅くなったタイヤはグリップ力が低下します。
レースなどを見ていると、レース前にはヒーターでタイヤを暖めていますよね。ゴムを暖めてやわらかくしてグリップ力を高めているのです。
そこまで分かってくると、何年間も使用して固くなったタイヤで走る恐ろしさがご理解いただけると思います。
濡れて無くても、凍って無くても、グリップ力の低下したタイヤは滑ります。つまり、溝が残っていても硬化したタイヤは交換したほうが良いということです。
溝の残量だけで判断するのはNGです!!
点検時には、エアが抜けていないか、釘などが刺さっていないか、タイヤの減り具合、亀裂などなどイロイロ見ています。もちろん、タイヤが硬化していないかもチェックしています。
安心して当店スタッフにお任せくださいね。
それから、洗車時などに4輪用のタイヤワックススプレーなどを使っている方はいませんか?タイヤに艶が出てとてもきれいですよね。でも、4輪用を使うのは絶対にやめましょう!!
何故か!? 4輪用にはワックス成分が入っています。艶出し油です!!
走行時、4輪車はタイヤの側面を使う事はありませんが2輪の場合カーブを曲がる際等、車体を倒してタイヤ側面部が路面に接することがあります。その部分にワックスが塗ってあったらどうなるでしょう!? すごく危ないです。
愛車をかわいがってあげてるつもりが、自分と愛車を危険にさらす事になってしまいます!! ご注意ください!!
タイヤの艶出しには、2輪用をタイヤの側面だけに、手で塗ってあげてください。
ハーレー純正
H-Dホイール&タイヤクリーナー(94658-98:消費税込希望小売価格 1,540円)
ハーレー・ブラック・タイヤサイドウォールプロテクタント(94628-05:消費税込希望小売価格 2,900円)
を使えば、バッチリです!!